愛しき種をただ一つ


「……なんつったよ、今」
と、思わず聞き返してしまったのは、吐き出された一言があまりにも浮ついて耳の上を滑ったからで。腕の下で何度目かの吐精に息も絶え絶えの、と言った風体の土方は近藤の呆気にとられたような言葉に少しばかりは傷ついたような顔をして見せた。
「聞こえ…なかったのか……」
決して華奢というわけではない体が、男を咥え込んだままぶるり、と震える。白い尻はだらしなく溶けきって、今はぐずぐずと熱い泥のごとく男の魔羅を飲み込んでいた。普段はぱりっとした仙台平の下に隠された形の良い双丘が、こんなにも淫らに貪欲に男を咥えて喜んでいる事を他の誰が知っていると言うのか。と、そんな事を考えては時折猛烈な 興奮を覚えるのもまた事実で。溶けきっているくせに、溶けきっているからこそか、そのぬかるみの中の心地良さはなかなか腰を引く決心をさせようとはしない。
魔性だな、と近藤は無意識に唇を舐めていた。
「や、聞こえなかったわけじゃねえが、……ややこがほしい、て聞こえたんだが、俺の聞き違いか?」
……あんたの胤がもっと欲しい、あんたのややこが欲しい、と。事切れる絶頂の間際、吸い付いた唇を解放してやった瞬間に叫ぶように言い放った一言を反芻して繰り返せば、土方は目を伏せて唇を噛んだ。最初聞き返した時に何でもない、と切り捨てなかったのも、今こうして否定もせず泣きそうな顔をしているのも。
「本気かよトシ」
「おっ、おれは……本気じゃなきゃ、こんな事何度も」
「いやいやいや、まってくれ、まってくれ」
思わず呆れた声を上げれば、潤んだ目をして食い下がろうとする肩を押して体を起こす。さすがに一刻もの間食われたままで、いい加減溶かされでもしそうな雄を抜こうと体を持ち上げかけたところで、腰の後ろへ回された両足にそれを阻まれた。
「……トシ、……歳三」
まるで駄々っ子のようだ。普段は言い聞かせればどんな事を言いつけようが腹の立つほど聞き分けのいい男が、泣きそうな顔でまだ情けをくれと縋り付いてくる。
女を相手にしたところで、彼女らには形式上引き止められはしてもこんなはしたない真似をされた試しはない。商売だからだ、と分かってはいても、今の土方の態度が異常である事くらいは理解できた。その上、
「勇さん……」
近藤さん、でも、ついつい口を滑らせて時々呼ばれる昔の名でもなく。熱っぽい目をして勇さん、と今の名で自分を呼ぶのはこの男が飢えている時だ。切羽詰まるとまるで商売女のような真似をする。女のような、とは例えども商売女はこんなに、
(溺れるような真似はしちゃくれねえ)
真似、ではなく。
……本当に溺れている。正気とは思えぬ言葉を、乞うように口にしてしまうのだから。
「しょうがねえやつだな、お前は」
今は何度も流された涙に濡れたままの、涼しい目元からすっと伸びた形の良い鼻を摘んでやれば、子供の頃と寸分違わぬ顔で笑う。京に上がってからは人前ではあまりころころと表情を変えることのない土方が、誰よりも表情豊かなのを知る者は、今のここでは少なくなってしまった。
だが、褥のうちでは時折。こうして何の肩書きもない、多摩にいた時と変わらぬ姿を晒すのが嫌いではなかった。
「子袋もねえってのに」
「あんたの胤なら、一人や二人、出来るかもしれない」
「時々どうしてこんななっちまうかね、お前さんはよ」
摘んだままの鼻を引っ張ってやれば、それこそ鈴を転がすような声で笑う。褥に居るというのに、子供のように無邪気な姿を晒されて、ずく、と体の芯が疼いた。
「そこまで言われて引き下がっちまったら男が廃るな」
抜くなと言わんばかりにがっしりとしがみついていた脚を宥め撫でてやれば、その先の行為を察したのか、土方は足を解いた。腐っても直弟子だ。鍛え抜いた脚力でもって腰を押し付けたまま離れなかった足が解け、崩れる体制を支えるように足を抱えて体を折り曲げる。案外柔らかな骨を持つ土方の、体を押しつぶすように腿が胸につくほどに体重をかければ、流石に少し苦しげな表情をしてみせる、が。
「いい顔だ」
切なげに寄せられた眉を見て呟けば、途端白い頰にぱっと淡い桜が散った。
「勇さん、勇さん…っ」
体を折り曲げられては自分から腰を振ることも叶わず、ただただ受け身の体制を強いられる。もどかしいのか手を伸ばして既に蜜も枯れきった花芯へ触れようとする手を押しとどめ、抱えた腰を捏ねるように溶けた泥へと腰をひねってやれば、白い喉が悲鳴をあげて震えた。
何度だろうか、少なくとももう三度、…恐らくはもっと。吐精を健気に受け入れた胎内は、腰を進めれば進めるほどぐずぐずと溶けて奥へ奥へと深くなるような気さえする。
底のある女の蜜壷とはまた違う。何度突こうが絶頂へ攻め立てようが、彼女らの体はこうも溶けきる事はない。
(体の柔らかい女は情も深いと聞くが、案外)
男の方が深いのかもしれぬ、と腕の下で歓喜に震える体を見下ろしながら近藤は胸の内へ湧き上がる満足感を覚えていた。江戸に残した妻と子のみならず、自分を投げ打ってでも、全てを肯定し、支えてくれる人を得られたというのは、なんと幸運な事なのだろう。それが例え、熱を上げすぎて時々こうして少しおかしくなるとしても、それさえ愛おしい、と思ってしまう程には。
既に何度も吸われて、もともとぽってりとしている土方の下唇が濡れて熟れて喰われるのを誘っているように見えた。ので、喘ぐように開いては空気を求める口を捉えると、がぶり、と空気ごと奪い取るように柔らかな唇へと歯を立てた。
「ンッ…!んん、っ」
呼吸を封じられて仰け反る胸には御構い無しに、反射的に開いた歯列を割って、白い真珠の一粒一粒を味わうように舌を滑らせる。舌には触れぬ接吻がもどかしいのか、歯列を味わっている途中で土方から舌を差し出されて喉で笑う。はしたない奴だな、と口に出しかけはしたものの、舌を伸ばす顔があまりにも切なく、そのまま素直に自分の舌を絡めて吸ってやった。
「は、ぁ……っ」
軽く歯を立てれば、土方はうっとりと、甘い水菓子を含んででもいるように閉じた瞼を縁取る睫毛を震わせる。溶けきった泥が、それでも貪欲に胤を吸おうと雄を奥へと引き込むのを感じながら、腸壁を擦り上げる様に腰を回してやれば、舌の隙間から声にならない嬌声が漏れ出た。
「ぐずぐずに溶けっちまってまぁ、だらしねえ尻だな」
「悦く、ねえ…か?手で、する、舐めればまた、よく、…なるか?」
「よくなかったら、こんなになるか?馬鹿だなぁ、中にいりゃわからんのか」
「だってあんたの、ずっとあつくて、そんな勃ってるかどうかまでなんか、ぁっ…あぁっ、や、待っ」
だらしない、の一言に途端に傷ついた顔をして慌てて此方を悦ばせるための手管を並べる土方の下腹部を押してやれば、慌てて手首を掴まれる。しかしさんざ嬲られて力の抜けた手では、近藤にしてみればやんわり、以外の何物でもなく。無視して腹の形が歪むほどに押し込めば、はらわたの向こう側で男を刺し貫く魔羅の影が薄っすらと感じられる気がした。
「ほうら、ここだここ、ちゃんとまだ萎えちゃないだろ」
「わっ、わかった!わかったからっ……押すな、押さないでくれ…!」
「してくれ、だのやめろ、だのわがままだな、おめェさんは」
「ちっ、違くて、ちが、……っ、そんな押したら出…っ」
「出しゃいいだろう、さっきも散々吐いて今更」
そうじゃなくて!と涙目になった土方が叫ぶ。常褥では声を潜めるようにして囀る唇から溢れた叫び声に、なるほど、と思った近藤は。
「そうかい」
と、にっこり笑うと腕の中で暴れ逃げようとする体を引き下ろすし、思い切り下腹部を、押した。
「ひっ、……ぐ、だめ、だめっ…!だめ、やだ、いや、…!…いやだぁ…っ……!」
一瞬。
耐えるように丸まった足がピンと伸び、腕の下で白い身体が痙攣する。耐えきったかのように見えた体は、しかし近藤が指を立てて筋肉の隙間を弄るように押し込んでやれば、呆気なく崩壊した。
信じられない、と目を見開いて悲鳴をあげた土方の花芯から、勢いよく飛沫が流れ出す。さらりと粘度のなく、僅かに饐えたような匂いの液体は、腎水などでは無く小水である事を示していて。しかし土方が今更慌てようが泣こうが生理現象を止められるはずもなく、吹き上がる水は腹部を流れて布団へとシミを広げて。
「……ぁっ…」
失態と羞恥に、赤面を通り越していっそ青くなった土方が硬直する。混乱しているのだろうか、信じられない、と言った風体で呆けてしまった彼の頬を優しく撫でてやれば、はっと我に帰った土方が両手で顔を覆おうとするのを押しとどめる。震える唇が噛み締められて色が変わっているのを、指を添えて口を開かせれば抵抗すべもなく指を咥えた。
「汚ねえなぁ、漏らしちまったのか」
顎をつまんで顔を持ち上げてやれば、青ざめていた頰に僅かに血の気が戻ってくる。言うべき言葉を迷っているのか、見つからないのか、紅く腫れた唇は差し込まれた指に閉じられず震えている。
「欲しいんだろう、胤が」
こくり、とそれでもその言葉には頷く素直さに、貪欲さに、愛おしさがこみ上げる。京に上がってからというもの、気を張って背筋を伸ばして、慣れない仮面を被ってまでこちらを立てようと奮闘する男が、まるで子供のように泣きじゃくり、小水までをも漏らし、ただ胤をくれと懇願する様は、壊れているといえば、壊れているのだろう。
それでも、与えられるものは全て、与えてやりたい、と思わせるほどの愛おしさは。
(俺もとうとう、どうやらおかしいな)
ぐずぐずに溶けた泥へと杭を下ろす。抜き差しするよりも、捏ねるように中を広げられた方が土方にとっては堪らぬものらしいが、乞われたものを与えるためにはそうも言ってられない。
自分本位にでも体を貪って、胤を注いでやる必要があるのだ。
「勇さん、布団、」
「後でいい、そんなもんは」
自分が汚した敷布に落ち着かなさそうに声を上げる土方に思わず舌打ちをしてしまい、びく、と目の前の肩が怯えるように跳ねた。
ここまでの痴態をさらされて、一旦洗うから待ってくれなどと、妙にズレたことを口にするのもまた、行き過ぎた羞恥の為なのだろう。今更、と唇を歪めてみても、そんなところさえ愛おしく思うのはきっと自分も、土方の懇願を鼻で笑えぬほどには同じ場所にいるからだ。
「欲しいんだろう」
「……欲しい」
「何が」
意地悪く聞き返してやれば、一瞬詰まった言葉も本当に一瞬で、先程痴態を晒したばかりの下腹部を愛おしげに撫でながら、土方はうっとりと口を開く。たね、が。と。
「あんたの胤が欲しい、ここに。……あんたの、子が欲しい。おれにも」
まるで。
願えば自分も子を宿せるのだとでも言わんばかりの顔は、とろりと幸せそうに目を細めるばかりで。
孕ませてやりたい、と、下腹に強烈にこみ上げる情に近藤は思わず唇を舐めた。ならばくれてやろう、望むままに、と、快楽を与えるためではなく、自分が吐精するために抜いた腰を突き入れる。ぐずぐずに溶けたと思っていた土方の身体は、不思議と行為の意味を見いだして胤を搾り出すとでも言うように、魔羅へ絡みついては奥へと誘った。
既に空になったと思っていたが、土方の言葉と痴態にまた熱を持つ腰に、現金なものだと自嘲もする。が、今はそんな体が都合が良い。
自分の中にはこんなにも腎水が溜め込まれていたのかと驚く程に、込み上がる劣情を注ぐために音を立てて腰を打ち付ける。ばちゅ、ぱちゅ、と、粘度の高い水音を響かせながら白い尻が揺れるのが眩しい。
「はっ、あ、っ勇さん、…っ勇さん……!」
腰をくねらせて踊る。さんざ吐精をしたのは土方もまた同じであるはずなのに、萎えたと思った花芯はまた熱を帯びて腹の上で腰を打ち付ける度に揺れていた。
普段なら女を泣かせているであろう雄も、自分に抱かれている間は身にならぬ胤を流すだけの器官と化す。指でいたずらにしごいてやれば、幼子のように首を振ったが、こちらの手を拒もうとはしなかった。
女とは違う、筋肉に覆われた胸板の上で主張する乳首をつねる様に摘まみ上げる。悲鳴をあげて仰け反ったのと同時、膣へと沈んだ雄を扱くように中が蠢き近藤は喉を唸らせて吐精を耐える羽目になった。
「あ、ひぅ、っ勇さん、何……」
「ここも良いもんかとな、……お前女みてぇだなぁ…歳三」
つまみ上げた指を離してやれば、ぷつり、と主張するように立ち上がるしこりを指で弾く。嬲る度に小さく悲鳴を上げて跳ね踊る身体を笑って見下ろせば、たまらないのか締まりのない顔をして、快い、と腫れぼったい唇が囀った。
「ここも、仕込めば果てるのもまた、できるか」
「あっあんたが……っ、あんたが、そうしろっていうなら、覚える、からぁ…!」
かり、と爪を引っ掛けて乳首を弾けば、もはや何をされているのかもよくわからないのか、妙に呂律の回らない口で叫んだ土方が懇願する。早く中に出して、と腰をくねらせ、足を絡める様は遊女でも無い。妻でも無い。まるで、妖のような。
「そうら、また中にくれてやる、しっかり飲んで孕めよ……!」
「あ、ああ、っ…あ、勇さ……なか、中っ…できちゃう、あんたの子、出来ちゃう……!」
びゅる、とまた何度目かの放たれた子胤は、柔らかに溶けた泥に飲まれて土方の腹に消える。残滓までを注ぎ込むように暫く繋がったまま震え、射精が終わるとうっとりとした顔で腹を撫でる仕草はまるで女のものだ。
「呆れたな、まだ足りねえって顔をしやがる」
「うん……まだ」
一度体勢を変えようと、喰われたままだった雄を引けば、ぽっかりと開ききった蕾は閉じることも忘れて、溜まった白濁をトロトロと垂れ流すだけの器官と化している。白い股を伝い落ちる精蜜に、指を絡めると「勿体ない」と体の中に押し戻す土方の痴態に、じわじわと腰へまた熱がぶり返した。
「勿体ない、って……お前なあ」
早く栓をしてくれとでも言わんばかりに震える蕾を見て、孕むまで何度でもと思ってしまう自分もまた同じ穴のなんとやらか、と思いながら尻を軽く叩けば、鳴き声をあげた土方の花芯から最早子胤も尽きたのか、透明な蜜が糸を引いて飛んだ。
「ほら、蓋してやるから四つん這いになれ」
どうせここまで搾られてしまえば、しばらく女の相手など出来るはずもない。ならば最後の一滴までお望み通りくれてやろうではないか。と、素直に濡れた布団の上へと這った男の腰を掴んで刺し貫く。溺れているのはまた自分も同じか、と浅ましく乱れながらくねる白い背中を見下ろして、乞われるまま、壊れるまま、幾度も胤を付けてやり、目の前で揺れる眩しい首へと歯を立てた。

「立てるのか」
土方が強請るまま何度も何度も交わりを続け、快楽を通り越して痛みさえ感じ始めた頃、ようやく満足したのか限界を迎えたのか、半刻ほどの間土方は気を失ってしまった。
暫く寝かせてやろうかと船を漕いでいる間に、しかし彼は目を覚まし、案外しゃっきりした顔で身支度を始める。繋がりを解いて立ち上がれば溢れる白濁を勿体ないと何度も押し戻していたのを思い出し、近藤はまた擡げそうになる欲に苦笑した。もう流石に一滴も絞り出せそうにない。しかし溶けきったその胎内へ雄を沈め、泥に埋もれて眠りたい、と思ってしまう程には。
(俺も相当か)
流石に袴をつける事は諦めたのか、着流しの姿ではあったが、土方は既にきちんと身支度を終えている。腕には二人分の汗と腎水と、そしてそれだけではすまない小水までを吸った布団の敷布が丸めて抱えられていた。副長自らが洗うようなものでもないだろう、と汚れた敷布は置いて行く様に言ったが、小姓にこんなもん洗わせられる筈がないだろうがと逆に怒られてしまった。
女を抱いたとでも言えば幾らでも言い訳はつくと思ったが、どうも土方は理由ではなく敷布に残った痕跡が自分のものである、というその一点で人には触らせられぬようだった。
「しっかり胤はついたか、トシ」
「さぁ、どうかな。……あんたの胤だ、根付いてくれなきゃ困る。そうじゃなきゃ、また…つけてもらわにゃなぁ、局長。」
わざわざ局長、などと挑発する様な物言いに、おかしくなって笑えば、先程さんざ布団の上で泣き乱れていた男とは思えぬほどの柔らかな笑みが返る。ただ、その唇がまだ朱を帯びて腫れており、瞳には薄く水の膜が張って見えるのが閨での名残を惜しんでいるようだった。
「ややこが宿ったら鉄漿付けしてやらにゃ」
「こんな大年増にか」
「武家の嫁になるんだ、そうだろう」
こいこい、と招いて身体を引き寄せると、立ったままの土方の腹部へと耳をつける。そこに何かが宿った、とでも言わんばかりの腹の子を探る様な近藤の態度に、土方の頰へと赤みがさした。
「あといっときやそこらで起こしに来るだろ、少しでも寝ておいたほうがいい。なんなら今日は起こすなと伝えておく」
「甘やかすなぁ、おとしよ。局長がそれじゃあ示しがつかんだろうが。お前こそしっかり寝ておけ、大事な身体なんだろう」
ぽん、と離れ側に腹を叩いてやれば、伏せられた目が潤む。別れ際にこの顔をするのは、いつもの事だが今日は一際愛おしく見えてしまうのは、溺れる者の目というやつだろうか。
「歳三」
「……ん」
名前を呼べば、膝をついた土方が顔を寄せ、啄ばむように名残を惜しんで唇を吸う。何度か触れ、ようやく離れた時にはもう、閨での気配をねじ伏せて副長の顔へと戻りつつあった。
「昼八つから山南と予算についてのすり合わせがある。あんたも顔を出してくれ、それまではゆっくりしてくれて構わないから」
「ああわかった。……ちゃんと中、洗えよ。腹あ下すぞ」
戻りかけた副長の顔をいたずらに揺らすように声をかければ、しかし土方は動じた様子も無く微笑んで「断る」とだけ言った。せっかく飲んだ精をむざむざ吐いてやるか、あんたの胤だぞと無言の笑みはそう言っているような気がして。
「今日一日、俺の胤を腹に入れたまま隊務に当たるってのか」
「……興奮するだろう?」
ふふ、ととろける様な笑みを残して裏口から姿を消した背中を見送り、思わず天井を仰ぐ。
「ったく、あんな情深いのは女探したっていやしねえ」
敷き直されたまっさらな布団に褥の気配は薄かったが、先ほどまで腕の中で泣き喘いでいた愛しい体温を思い出し、近藤は短い眠りを貪るために目を閉じた。
本当に、腹の中で胤が根付いて、自分の……子ができてしまえば良いのに、などと。……思ったのは夢の中であったのか、どうであったか。

作成:2018年2月16日
最終更新:2018年2月16日
子供が欲しいって騒ぐおとしが書きたかったので
お漏らしはすきあらば

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